犬にネギ類を食べさせてはいけないという話を聞いたことがある方も多いと思います。抗がん作用や血液サラサラ作用など、人間にとってはとても有効な栄養成分を持つ玉ネギやネギ類ですが、犬にとってはとても有害な成分が入っているのです。
では、どんな成分が犬にとって有害となるのでしょうか。今回は、なぜ犬に玉ネギやネギを与えてはいけないのか、その理由について解説します。
知っておきたい玉ネギやネギの成分
玉ネギや長ネギなどのネギ類は、ネギ属に分類されています。抗酸化作用が高いことから古くから薬用野菜として親しまれてきました。
人間にとっては薬効ともいうべき抗酸化作用を持つ野菜なのですが、犬にとっては著しく健康を害する成分を持つ野菜なのです。そのため、犬に絶対に与えてはいけない野菜の一つとして知られています。
まずは、玉ねぎ、長ネギなどネギ属の持つ独特の2種類の成分を知っておきましょう。
玉ネギや長ネギの辛味成分とは
玉ねぎや長ネギを食べるとピリッとする辛味成分、これはミロシナーゼという酵素の働きによるもので、このミロシナーゼから作られる成分がイソチオシアナートという物質です。
このイソチオシアナートは、アブラナ科の野菜に多く含まれている成分でクレソン、キャベツ、白菜、ブロッコリー、大根、小松菜、ニンニクなどに多く含まれています。
強い殺菌作用を持つイソチオシアナートには、解毒酵素の働きを高めたり、抗酸化作用を高める働きがあり、これによってガン細胞の増殖を抑制する効果が期待できます。さらに、代謝を高める働きもあるためアンチエイジングにも役立つとされているのです。
玉ネギを切ると涙が出る成分とは
玉ネギを切っていると涙が出たり鼻がツーンとしてりしませんか。この涙を出す刺激成分が、硫化アリルというイオウ化合物で、特に玉ネギに多く含まれています。
硫化アリルには、発ガン物質を無毒化する解毒酵素と体に溜まった活性酸素を除去する高い抗酸化作用があります。この2つの作用からガン抑制物質として注目されている成分なのです。
硫化アリルとは?
硫化アリルはアリシンとも呼ばれている成分で、アリルプロピルジスルフィドという化学物質の一種です。この硫化アリルは、ビタミンB1の吸収を助ける役割を果たしているのですが、人間にとっては神経鎮静作用、疲労回復、代謝促進などの作用があります。
しかし、犬にとってはこの硫化アリルが有毒とされている成分なのです。硫化アリルの作用によって、血液中のヘモグロビンが酸化し、溶血性貧血という貧血を引き起こすのです。
これが、玉ネギ中毒と言われる症状で、犬だけではなく猫や牛にも起こる恐ろしい中毒です。
犬が玉ネギや長ネギを食べるとどうなるの?
強い抗酸化作用や抗ガン作用がある玉ネギや長ネギ、近年ガンを発症する犬が多いことから、ぜひ与えてみたいと思う方も多いかもしれません。しかし、この硫化アリルは犬にとっては少量でも危険な成分なのです。
犬が玉ネギや長ネギを食べると、急速に元気がなくなる、激しい嘔吐や下痢をする、血尿または血便が出る、白目の部分が黄色くなる(黄疸)などの症状が出る場合があります。
玉ネギや長ネギに含まれている硫化アリルは、犬の赤血球を破壊します。破壊された赤血球を元に戻すことはできないため、動物病院での治療も対処療法となってしまいます。
動物病院では、赤血球が破壊されているか血液検査をして、その度合いによって点滴、ビタミン剤投与、強心剤、利尿剤などが処方されます。
あまりに貧血がひどい場合やぐったりしている場合は、命にかかわることもあるので注意が必要です。
硫化アリルは玉ネギや長ネギにどのぐらい含まれているの?
硫化アリルは、辛味成分の強い玉ネギや長ネギに多く含まれていますが、具体的に1個の玉ネギや長ネギにどれぐらい含まれているかは定かではありません。個体差がありますが、食べる量の目安として犬の体重1kgに対し約20gの玉ネギや長ネギが危険な量と言われています。
ただ、はっきりこれだけの量を食べると危険という数値が明確にわかっているわけではありません。
柴犬など、硫化アリルに敏感な犬種は、ほんのひとかけらでも危険である可能性が高いですし、1個食べてしまっても問題のない大型犬もいます。
犬がもし玉ネギや長ネギを食べてしまったら?
玉ネギや長ネギに含まれている硫化アリルは、加熱しても壊れることはありません。そのため、玉ネギを入れて作るカレーや肉じゃが、ハンバーガー、オニオンスープなども犬にとっては危険な食べ物と言えます。
もし、犬が玉ネギや長ネギそのものではなく、加工した食品などをなめてしまったり食べてしまった場合も、玉ネギ中毒を疑う必要があるのです。
もし、犬が玉ネギや長ネギを食べてしまったら、なるべく早く動物病院に連れて行きましょう。硫化アリルが分解されるには人間で48時間と言われています。食べた直後はなんでもない場合も、数時間後に症状が出てくる可能性もあります。
玉ネギや長ネギなどネギ属の野菜には要注意!
多くの料理に使用されている玉ネギや長ネギですが、実は犬だけではなく人間も玉ネギ中毒を起こす場合があります。人間の場合は、重症には至りませんが、腹痛、吐き気、頭痛などの症状ができます。
体に良い成分である反面、毒素としての要素をも持っている硫化アリル。玉ネギや長ネギはついつい置きっぱなししがちですが、絶対に犬が食べてしまわないという保証はないので、管理には十分に気をつけましょう。