犬が主人公のおすすめ映画 その⑤ マイ・ドッグ・スキップ
*孤独な少年とジャックラッセルテリア犬との友情(米映画、2000年)
「マイドッグスキップ」では犬映画ながらまず脇を固めている役者陣が素晴らしいです。主人公のウィリー少年の父親役を演じているのがケヴィン・ベーコンです。
「フットルース」でアイドルスター俳優になり一世風靡をしたあと、幅広い個性的な役をこなしカメレオン役者と呼ばれているベテラン。
そして母親はダイアン・レインです。「アウトサイダー」「ストリートオブファイヤー」「コットンクラブ」など80年代の青春映画の顔だったスター女優の一人です。
このダイアンレインもそうか母親役をするようになったのか、「マイドッグスキップ」の公開時には非常に感慨深いものを覚えた大人も大勢いたはず。
それはさておき最初に言っておきます。好き嫌いがはっきり分かれる映画です。どんな映画かというと1942年のミシシッピ州ヤズーを舞台にした少年と犬(ジャックラッセルテリア)との心の交流を描いたストーリーです。
あえていえば「スタンドバイミー」や「フィールドオブドリームス」の世界観に共通するものがあるかもしれません。(つまりアメリカのノスタルジックな演出)
「マイドッグスキップ」の内容はこうです。片足を失っている退役軍人の父親を持つウィリー少年は孤独です。友達がいません。唯一親しくしているのは、隣に住む野球選手だけです。
しかしその選手も戦場に駆り出されていなくなってしまいました。そこで母親がジャックラッセルテリアの子犬のスキップを誕生日プレゼントとしてウィリーに贈ります。
ウィリーとスキップは固い絆で結ばれ、どこへ行くのも一緒です。スキップのおかげでウィリーは町の配給所で憧れの女の子とも口をききます。
またスキップのおかげで少年はいじめっ子たちとも親しくなっていきます。野球チームにも入ります。
アメリカの古き良き時代を感じさせられる映画です。おそらくアメリカ人の多くはこの映画に郷愁感を覚えハッとさせられるのではないでしょうか。
とても心に染みるよい映画なのですが、オールドアメリカンテイストが強いので、観る人によってはこの物語の世界観に入りにくいのではないかと感じました。
反対にアメリカ人が「男はつらいよ」シリーズの映画を見ても、どこか居心地悪さを感じてもじもじしてしまうのではないでしょうか。
それと同じで、アメリカのアットホームかつ懐古主義的なストーリーにもぞかゆくなってしまう日本人もいると思います。
またウィリーの犬のスキップへの態度で眉をひそめる場面もあります。事情があるとはいえ殴ってしまうなど。
ただ犬を飼っていると普通は誰しもが「ああ申し訳なかった!」ということをやってしまうことはあると思うのです。
そういう意味ではきれいごとだけではすましていない、犬と本当に向き合って心を通わせたハートウォーミングかつ芯の通った素晴らしいおすすめの映画です。
犬が主人公のおすすめ映画 その⑥ ドッグ・ショウ!
*シーズー、スタンダードプードル、ワイマラナー、ノーリッチテリア、ブラッドハウンドらがチャンピオンを目指す!(米映画、2000年)
日本でものすごくメジャーだという犬映画ではないのですが、ゴールデングローブ賞最優秀作品賞、全米批評家協会賞、ボストン批評協議会賞ほか多数の賞にノミネートされ本国アメリカでは高く評価されたドキュメンタリータッチの要素もある傑作コメディです。
あらすじは全米でも高名なドッグショーが開催されることになり、何としても我が家の愛犬をチャンピオンにしたい飼い主たちのてんやわんやを描いています。
ただのコメディー映画ではありません。インタビューも取り入れており、まるでフィクションものの映画ではなく本当のドッグショーのドキュメンタリーを見ているような錯覚にも陥ります。
実際に役者たちはアドリブ演技で全編撮影をしたということです。役者たちがその役になりきり、その役の人間だったらこう動くこう話しこういう仕草をするだろう、と考えて演技をしたのです。当然脚本は存在していなかったそうです。
特に犬好きでなくても、役者志望であったり舞台の芝居を観るのが好きな人にも大のおすすめ映画です。
余談ですが邦題が「ドッグ・ショウ!」。一般的には「ショー」と表記するものだと思うのですが、なぜ「ショウ」に?ちょっと気になりました…
犬が主人公のおすすめ映画 その⑦ 僕のワンダフル・ライフ
*レトリバー、シェパードそしてコーギーに転生した犬の魂(米映画、2017)
比較的最近日本でも公開され大ヒットをした映画です。すでにご覧になられた方も大勢いることでしょう。
簡単にいえば主役の男の子が犬を飼っていたけど、その犬が亡くなってしまった。しかしその犬は何度も生まれ変わっては少年(途中で大人になりますが)の元にやってくる、というペットロスを経験した者には涙なしで見られない映画です。
生まれ変わりというものが本当にあるかどうかは分かりません。しかし最愛のペットを失ったとき、その喪失感は測り知れないものがあります。「また亡くなったあの子に会いたい」と思います。
その願望にこたえてくれる最高の、犬の輪廻転生の映画です。
ところでこの映画が日本で公開した頃、私は飼っていた犬の一匹を亡くしました。その犬が亡くなってから約三日間、彼(犬)のクッションベッドが不規則にカタカタ動きました。
他の物は何も動かないのに、そのクッションベッドだけ動いていたのです。あの子の魂がいたんだな、とぼんやりと感じました。
わたし自身は非常に現実主義で実のところ、生まれ変わりも何も信じません。しかしその時に「魂の存在」はあるのだろう、と思いました。
「僕のワンダフルライフ」は愛犬を亡くした直後に見るのはちょっと辛いかもしれません。しかし心の余裕ができたとき、また犬を再び飼いたいと思いだした時の方におすすめする愛犬との「再会」の映画です。
(ちなみに黒色の犬が主役の犬映画はほとんどない?表情が見えにくいからでしょうね…)
犬が主人公のおすすめ映画 その⑧ ネバー・クライ・ウルフ
*人間よ、オオカミを犠牲にしないで (米映画、1983年)
8本目のおすすめ「犬」映画は犬のルーツでもあるオオカミものにしたいと思います。
「ネバークライウルフ」のあらすじは野生のオオカミたちが家畜を襲っているので、彼らを駆除しようじゃないかという動きになったところから始まります。
そこでオオカミの駆除にあたり、主役である学者が送り込まれてきます。学者は駆除予定のオオカミの習性など調査していきます。
その結果分かったことはオオカミは先入観にあったとおりの獰猛で野蛮な生物ではない、むしろ大人しくて控えめであること。
そして彼らの主食はそもそもねずみといった小動物であったこと、ただし森林が減ったことにより十分に獲物を捕まえられなくなり空腹のあまり家畜を襲い始めたのだ、ということでした。
しかも学者が仰天したことはそれだけではありません。そもそも金儲けビジネスを企んでいる人間たちが何がなんでも邪魔なオオカミを駆除したく、それに適当な理由付けを求めていたという事実です。
そこの土地には温泉が湧いていることがわかっており、ビジネスマンたちは日本人ツーリスト(時代は日本のバブル期)を集客を見込み、オオカミを追い出して(殺して)、温泉観光地にしたかったのです。
「ネバークライウルフ」の見どころはカナダ北部のツンドラ地帯の大自然の驚異と神秘的な映像の数々です。
裸で寝そべっている学者のところにトナカイが近づき、周りを飛び回り始めます。または氷が崩れて海に落ちるシーンなど、思わずハッと息をのんでしまいます。
見ていて涙があふれてきます。北のかの地で暮らすオオカミを殺すな、そっとしておいてやってくれと叫びたくなります。
この映画を通して考えさせられることは人間は目先の儲けや娯楽の誘惑に惑わされてはならないこと、そういったことが生態系にどのような悪影響を及ぼしてしまっているのかここで改めてしっかりみていくべきだということです。
「ネバークライウルフ」は単なる犬映画ではなく壮大な大自然ストーリーだといえるでしょう。ぜひ全国の中学高校で上映会をしてほしいと思うほどです。
犬映画が伝えてくれるものとは
犬映画というと、ただ可愛い犬が出てくるだけの物語だと軽んじてしまいがちです。
しかし実のところ、今回おすすめした8本の映画のように、驚くべき深いストーリーでそして登場する犬の演技が天下一品のものもあるのです。
たかが犬映画されど犬映画。あなどってはなりません。素晴らしい犬映画があなたに与えてくれる感動はずっしりとあなたの心に響くことでしょう。そして命に対する見方そのものも、がらりと変えてくれるかもしれませんから。